エッセイと絵本紹介一覧へ 子どもの心と本の世界トップへ 図書館へ ホームへ ●HOME●
●図書館へ戻る●
●「子どもの心と本の世界」表紙へ戻る●
●エッセイと絵本紹介一覧へ戻る●
BR_LINE

9月
9月

〜わが家のアン・テリ物語(4/6)〜

<今月の本>
ガブリエル・バンサン作 『アンジュール』、フィリッパ・ピアス作 『まぼろしの小さい犬』




《心を癒す・今月の絵本と物語》

 ということで、今月は、「犬」にまつわる絵本と物語を選んでみました。


アンジュール

ガブリエル・バンサン作・絵『アンジュール』

(ブック・ローン出版)

 この絵本は、文字が一字もない絵だけの絵本です。アンデルセンの「絵のない絵本」というのもありますが、これは「字のない絵本」です。
 しかも、黒い鉛筆でクロッキー風にデッサンされた絵で、すべてを物語っています。原題は”UN JOUR UN CHIEN”つまり、「ある日、一匹の犬が」くらいの意味ですが、副題には「ある犬の物語」と記されています。

 表紙、それから扉を開くと、やせた一匹の犬がこちらを向いている絵があります。次の見開きで、一台の乗用車が道端に犬を投げ捨てて、フルスピードで走り去っていくところが描かれています。もちろん犬は必死で追いかけてきます。それこそ死に物狂いです。
 ページが変わると、一台の乗用車が止まって、窓から首だけ出した男のひとが振り返り、遠く、豆粒ほどの大きさになった犬を見ています(車中には助手席にどうやら女の人、後部座席に頭の先だけ見えるのは、子どもでしょうか)。

 犬はなおも追いかけます。しかし、やはり、車は再び走りだして、とうとう見えなくなってしまいます。ひとり、道の真ん中にぽつんと立ち尽くす一匹の犬。やがて、しかたなく、とぼとぼと歩きだします。といっても、あてがあるわけはもちろんなく、たよりの鼻を活かして、道や風の匂いをかぎ分け、歩き続けます。やがて、ぐったりして道端の草の上に座りこむと、車の音が聞こえました。(戻ってきてくれたんだ!)
 犬は喜びいさんで飛び出します。

 ところが、とんでもありません。そこは、どうやらハイウェイのようで、次々に車がきます。急に飛び出してきた犬を避けようとしてハンドルをきった一台が後続車に衝突して横転してしまいます。次の一台も追突して、大事故になってしまうのです。
 驚き、尻尾を丸めておびえている犬。遠くから、車を止めた人たちが走ってきます。事故車は燃え上がり、人々がさらに集まってきます。ついに道路は大渋滞。犬は恐れ、不安に駆られて、振り返りつつ逃げ出します。


前のページへ 次のページへ
BR_LINE
Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All rights reserved.