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2月
2月

〜子どもの自立、その旅立ち(3/6)〜

<今月の本>ルース・エインズワース作 『ふゆのものがたり』



《心に生きる今月の物語》

 寒い冬も、もう少し。日が一日一日長くなって、梅の花もほころんでいます。
 今月は、その残された寒い冬の日に、ぜひ読んでほしい一冊をとりあげてみました。
 何やらこの本は、親と子、子と友だち、家族、そして、それぞれの愛の有り様、などについて考えさせられます。つまりは、子どもが自立したり、親が子離れしていくことの意味が、直接的にではなく、不思議な物語の流れの中で、語られているように思うのです。
 題名からいっても、雪のしんしんと降る夜に子どもたちに読んでやるのにピッタリ。さしずめ昔なら、囲炉裏やコタツを囲んで、今の時代なら、ストーヴや床暖房で暖かい部屋のソファで、親子で読んで過ごせたら最高、といったところでしょうか。


ふゆのものがたり

ルース・エインズワース作『ふゆのものがたり』

(河本祥子訳・絵/福音館書店)

 以前にご紹介した『黒ねこのおきゃくさま』と同じ作家の物語です。
 エイズワースの作品には、確かな描写力に支えられた、透明感のある、どこか不思議な味わいがあります。この作品も、いわゆる昔語り的な雰囲気があって、しかし、表現は型通りでもなければ、決して単純ではない。きわめて現代的なテーマが作品の奥には感じられ、見様によっては底に怖いものが微かに潜んでおり、それがまた魅力なのです。

 作者エインズワースはイギリスの都市マンチェスターに生まれ、3人の男の子を育てながら、児童文学や詩を発表し、イギリスの国営放送BBCのラジオ番組の台本も書いています。以前にご紹介した、私の敬愛してやまないフィリッパ・ピアスもBBCで仕事をしていたのですが、私は何となく両者に共通したものを感じます。それは人生や人間を鋭く、深く捉えて、しかも描いた世界に美しいポエジーがある、という点です。

 もちろん、いずれもファンタジーとはいいながら両者の違い、それぞれの個性は明らかです。簡単にいえば、エインズワースの世界はどこか「昔話」に通じる語り口があり幼年が楽しめるのに比べて、ピアスの作品はどちらかといえば、イギリス伝統の心理小説により近い世界ではないかと思います。そのせいもあってか、ピアスの作品は、少し大きい子ども、日本でいえば小学校中高学年以上の子どもたちやおとなに、共感をもって迎えられているように思います。


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