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−対 談−
シナプスの微量物質が心と体のバランスを支配する
小林 登×持田澄子

2  サイレントになる不活性のシナプス
小林 私は小児科医ですから、発達の話と絡めて話をさせていただきますが、赤ちゃんは生まれてからシナプスの数が急激に増えて、すぐに減っていきます。そこでスクラップ・アンド・ビルドをやって、シナプスを切り捨てたりしていますね。いらなくなったシナプスは消えていくわけですね。
持田 そのような現象が知られています。最近ではサイレントシナプスというおもしろい現象も見つかっています。形態は持っていても使われていないものがあるのですが、それは何度も使っていると活動するようになることがわかってきました。シナプスそのものが消えてしまうというよりは、あっても使われない、機能しないということだと思います。そこでも鍵となるのは伝達物質ですね。伝達物質が放出されないと、そこはどんどんとコネクションが弱くなっていく。
小林 そうすると、必ずしも昔言われたように消えていくとか、プルーニング、枝切りをするのではなくて、働かなくなるということでしょうか。
持田 ええ。まあ、いろんな人がいろんなことを言っています。サイレントになるということも一説だし、培養細胞を使って観察している研究者の中には、スパインと言って樹状突起のところに信号を受け取る装置があるんですが、その数がどんどん変わっていくという人たちもいますので、シナプス自体が消えてしまうというのも一説ではないかと思うんです。
 でも、子どもが言葉をどんどん覚えていくとか、楽器を始めてどんどん上達していくといった場合に、脳の中で何が起こっているかといいますと、たぶんシナプス結合がどんどん強くなり、増えていっているのだと思います。
小林 言語に関係のあるような神経細胞のシナプスでは、神経伝達物質として主にどんなものが使われているんですか。
持田 脳神経では主にグルタミン酸が使われています。
小林 グルタミン酸なんて味の素の中に入っているような物質だけど、どうしてあんなものが使われるようになったのか。いくらグルタミン酸を摂ったって、頭がよくなることにはなりませんけどね(笑)。
持田 ならないですね(笑)。やっぱり回路をどんどん使わないとだめです。刺激に対応する回路を活性化しないと。
小林 僕はよく子どもたちが遊ぶ喜びいっぱい、学ぶ喜びいっぱいになるような教育の場をデザインしないといけないと言うんです。先生の神経伝達物質の話を聞いていても、喜びいっぱいになるということはニューロンのネットワークシステムがわーっと動いているような状態にすることで、シナプスをサイレントにしないことだと思いますね。
持田 私もやっぱり刺激を与えないといけないと思います。刺激といっても、機械と向き合って例えばゲームをするとかいうことではなくて、いろいろな刺激ですね。多様なニューロンを活性化させてあげないと。一部の神経だけがいくら発達してもだめだと思います。
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