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―対談―
人類学と子ども 脳の巨大化とともに長期化した子ども期

小林 登×馬場悠男

1  化石の発見が繰り返されて系統的な人類学が始まった

小林 私は1970年代に東大の教授になって、東大紛争後の医学部を再建するために、世界の大学の医学部を視察して回りました。その頃、欧米の大学ではすでに、生理学、解剖学、生化学などの細分化された学問を統合し、さらに人文科学や社会科学の成果も交えて、ヒューマン・サイエンスとして人間を学ぶ態勢ができていました。日本の子ども研究の分野でもそのような考え方を確立しようと、私は70年代から学際的な「子ども学」の大切さを提言し続けてきました。
 馬場先生がご専門とされている人類学という学問も、総合的に人間をとらえる点では共通しているようなので、本日は先生に人類学のお話をうかがい、ぜひ子ども学研究に役立てたいと思っています。まず、人類学とはどのような学問なのかを教えていただけますか。

馬場 細分化された学問を統合化するという面で共通性があるというのは、まさにおっしゃる通りだと思います。人類学というのは、生物の進化の流れの中で人類を総合的にとらえる学問だと考えていただければいいのではないでしょうか。とくに、現代では、機能解剖学、分子遺伝学、年代推定法などが飛躍的に進歩しましたので、そのような成果を活かしながら、総合的かつ実証的に人類進化について考えていけるようになりました。

小林 昔の人類学と今の人類学の大きな違いは何なのですか。

馬場 昔は化石の発見量が少なくて、時代的にも地域的にも限られていました。ですから、断片的な解釈をするだけで、人類の進化の系列の中で化石の意味を考えることはできなかったのです。しかし、化石がたくさん見つかると、形態の比較などによって進化の道筋がたどりやすくなり、系統的なものの考え方ができるようになりました。人類学の歴史そのものは古いのですが、そのように変わったのは第二次大戦後のことで、自然科学の分野として考えると、人類学は新しい学問だとも言えます。
 とくに、最近のDNA分析の技術によっても、人類学は大きく変わりました。例えば、ネアンデルタール人の化石はヨーロッパで発見されたので、ヨーロッパ人の祖先と言われた時期があるのですが、現在では、化石から抽出したDNAの分析の結果、ヨーロッパ人とはまったく一致しないことがわかっています。科学的に系統を証明することができるようになりました。

小林 発見される化石の量が増えてきたし、分析の手法も進歩してきたのですね。人類化石を見つけるのは難しそうですが、ここに化石がありそうだというのは、どうやって予測するんですか。

馬場 それは同じ時代の、すでに絶滅した動物の化石が発見されたりすることで推測されます。化石が地表面に露出するには、地層が隆起してから浸食される必要があります。地殻変動で地層が過去に大きく隆起し、その後に河川などにより浸食された場所で見つかりやすいですね。また、骨のカルシウムがうまく保存されるには、土壌がアルカリ性でないといけません。


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