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トッププレイフル/プレイショップとはプログラム振り返りスタッフプレイショップ後の対談

 


Post-playshop Dialog (研究者座談会)
1. イントロダクション
2.プログラムの評価法
3.ファシリテーター(プレにい・プレねえ)
4.プレイフルの概念について
5.プレイフルなプログラムのあり方について
6.プレイフルな場のあり方について

1. イントロダクション
プレイショップ実施後、1999年からCRNプレイフル研究に関わっている研究アドバイザーを交えて、振り返りのミーティングをしました。

参加者(敬称略・順不同)
●小林登(CRN所長)
●上田信行(甲南女子大学教授/Ed.D.)
●ヒレル・ワイントラウブ(公立はこだて未来大学システム情報科学学部教授)
●宮田義郎(中京大学教授/Ph.D.)
●田口ヤスコ(資質表現教育研究所代表/Ph.D.)
●沢井佳子(チャイルドラボ所長)
●河西由美子(玉川学園全人教育研究所研究員)

2.プログラムの評価法

上田: 記録をとったり、効果の評価をどうしていけばいいのかが、一番難しいと思います。プレイショップの評価はフィードバックの評価なんです。子どもがどう変化していったかというよりも、全体の学びのコミュニティが、どういうふうに生成していくか。次によりよく生成するために、何を変えていけばいいか。何か普遍的なものを見つけるというよりは、リフレクションをかけて良くしていくという、永遠の連続体のなかにプレイフルという精神が生きているのではないでしょうか。それを少しずつ「何が起きたのか」「どういうふうにすればいいか」など一般化し、たくさんの人が使ってもらうにはどの部分ができるんだろうかと考える。そのためにもリサーチしてうまく記録がとれないだろうか、うまいデザインはないだろうかと思いました。

小林: プレイフルのデザインを考えるときに、これからは生物化学的理論や情報科学的理論を念頭に置く必要があります。脳の中には外からの情報を処理するプログラムがあちこちに局在しています。プレイフルが、脳のもっている多くのプログラムを100%同時にフル回転できるものであれば、それがクリエイティビティ豊かな人を育てることになるでしょう。ですから生物化学的にプレイショップをとらえられるのではないでしょうか。欧米は前から取り組んでいますが、日本でもやっと教育と脳科学を結びつけようという動きが出てきています。

宮田: 脳のモデルとプレイショップをどう結び付けられるかですね。プレイショップから逆に脳が見えるかもしれない。プレイショップの最中に、脳全体が活動している、だんだん脳が活性化されてくる様子を測ることができないものでしょうか。

3.ファシリテーター(プレにい・プレねえ)

田口: プレイフル度評価の数値も大事ですが、その場で出会いを素直に受け取れる感性をもったファシリテーターに育てることが、プレイフルの精神に近いのではないでしょうか。リハーサル中プレにい・プレねえは左脳を使っていますが、本番では右脳と左脳をフル回転させています。

上田: スタッフがプレイフルであることは、今日とても感じました。

ワイントラウプ: 今回のプログラムで重要なのは、成長ゲームだと思います。「コネクション」の感覚が大事なのです。プレイショップの目的は「self expression」と「coming cloth to nature」だと思いますが、今日は上からの指導的な言葉が多かった。子ども達には自分のストーリーを作らせるべきではないでしょうか。

田口: それはとても重要です。学生は相手の気持ちの引き出し方の技法を知らないから、つい自分が知っている事を教えてしまうんです。

小林: また時間的制約も大きいですね。秋には1つのプログラムをじっくりやるのもいいかもしれません。

4.プレイフルの概念について

上田: プレイフルの精神というのは、企画されたイベントではなくて、しっかりと仕込みはするけれども、割烹料理のように来た人の顔をみて、パッパッと出す。何が来ても大丈夫だと、あらゆる可能性を検討しようと、シミュレーションもしようというわけです。そういう意味でファシリテーターというのは、たとえばサッカー選手なんです。サッカー選手が走りながら全体のバランスを見ているように、メタレベルで全体を見る力をつける。つまりプレイフルインテリジェンスとでも言えるもので、メタレベルで現象をみながら自分をコントロールし、即興的に対応できる知性なんです。ただ楽しいだけがプレイフルではないんです。

CRNスタッフ: プレイフルインテリジェンスは、子どものうちにどのような経験があれば育つんでしょう。たとえば同質ではない人たちとの関わりで、メタレベルの関係性を見つけていけるのではないでしょうか。

上田: インテリジェンスとは、適応、ネゴシエーション。つまりダイナミックにネゴシエートできるようなエンジンがプレいフルなのではないでしょうか。

CRNスタッフ: 例えば困った事があるとき、答えを聞きに来るのでなく、自分達で情報交換し考えていくことも、ネゴシエーションではないでしょうか。

宮田: プレイショップに参加した人が「ああよかったな、またやって欲しいな」と思うのと「面白いから自分たちでやってみよう」と思うのは全くが違うと思うんです。この、自分たちでやろうと自己組織化すること、それを学ぶ事がプレイショップなのではないでしょうか。


5.プレイフルなプログラムのあり方について

ワイントラウプ: アクティビティとムービングを合わせるのがいいと思います。

上田: プレにい・プレねえがデモをしなくても、頭と体を即興的に使ってできるものを、先にやるといいかもしれませんね。たとえばバンブーダンスのように、体を少し動かし心地よい疲れがあるほうが、緊張感がとれていいかもしれませんね。

河西: 図書館でお話会をやるときは、少し手遊びをするんですよ。お話自体に入るための準備運動みたいなもので、緊張がとけて気分が全く変わる、違う世界に入るんだっていう準備ができるんです。

田口: 前回は手遊び唄を立ってやっていたんですが、今回は参加者の温度差解消のために、座ってやったんですよ。もっと運動をするセッションを15分くらい入れるのがいいかもしれません。ただ、それには大きく体を動かせる広い空間が必要です。

上田: 気分を入れるための準備、トランスフォーメーションの儀式が必要かもしれませんね。アクティビティは時間の流れでいくよりも、空間が大事です。プレイショップと空間の関係がこれからの課題ではないでしょうか。

田口: そうです、時間割じゃない。伸び伸びできる空間が必要です。


6.プレイフルな場のあり方について

CRNスタッフ:

このチーきちルームの雰囲気はいかがですか?

田口: パソコンが冷たい印象がします。クレヨンなどの子どもが自由に使っていいものと、使ってはいけないものが同じ場にあるのは、違和感があります。子どもは何でも使いたがりますから、「NOT OK」を出さないような空間作りが必要です。

宮田: フリータイムでも、ここでは好きにできるから、即興的に遊べていたのではないでしょうか。

CRNスタッフ: テンションの低い子が集まった時に、ここはプレイフルは場であるということを、どうやって分かってもらえるでしょう。

上田: ここをアトリエにしたらどうでしょうか。ハイテクからローテクまで、100種類くらいの表現のメディアを用意するんです。五感を全て使えるように、匂いのあるもの、光と影のあるもの、音のあるもの、触感に訴えるもの、シームレスのメディアを。100のメディアがあれば100の言葉が生まれます。そしてそれによって自分が変われることを知るメディアがある空間です。

CRNスタッフ: ここが、日常的にプレイフルを味わえる場であることをわかってもらうにはどうすれば。よいでしょうか。

上田: 家にあるものがプレイフルの道具になるんだということを見せる必要がありますね。

沢井: たとえばCGの基礎は織物だそうです。すべてのハイテクの基礎には、こうしたローテクがあるのだと分かるようにしては?

上田: いっぱい道があって、その中からどれがいいかと選ぶのが楽しいんだと、それを教えられるように。だから、ここはいい意味で厳しい場所にしてほしい。21世紀のクラフトマンシップ、もの作りの真髄がわかるような場に。そしてここの取り組みをディフージョンとして普及させていくべきでしょう。