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Vol. 19, No. 2, February 2003
1. 児童虐待
2. バイオフィードバック
3. 少年性犯罪者:いつまでも危険なのか?

児童虐待

 5歳以下の子どもが頭部の重傷を負う要因は、事故的なものというより虐待によるものの可能性が高いという報告が88回自然科学集会、そして北米放射線学会の年次総会で発表された。予測研究の中で研究者は、実際に家庭内での事故で頭に怪我を負った94人の5歳以下の子ども達について調査した。それによると、95%の子ども達はベッドやソファから落ちるといった事故によるもので、重大で長期にわたるような問題はなかった。「私達の経験では、家庭で偶然事故に遭った5歳以下の子ども達はほとんど頭部に重傷を負っていない。」研究者カール・J・ジョンソンはそう言った。「ベッドやその他の家具からの落下では重大な怪我に至らない。一方、堅い面に落ちた場合は、一般的に打ち身や打撲が生じる。」 - 北米放射線学会

バイオフィードバック

 最近の研究によれば、バイオフィードバック(生体自己制御)セラピーはADHDの子どもの治療に有効であることが明らかになってきた。リタリンと両親のカウンセリングの一年間にわたる治療のほかにバイオフィードバック治療を受けたADHDの子どもは、そうでない子どもに比べて投薬を止めた後も症状は軽減されたままである。バイオフィードバック治療を受けていない子どもは、ADHDの症状がすぐに戻ってしまったと研究者たちは述べている。両親の子育てクラスの受講や学校のカウンセリング、投薬の治療を一年にわたって受けた6歳から19歳までの子ども100人を調査した。特定の行動が脳波パターンに影響を与える事を見せられた後、51人の子どもは、遅い脳波を速い脳波に変化させ、緊張を解除させるコツを修得するバイオフィードバック(生体自己制御)セラピーを週一回受けた。コンピューター化された注意テストと行動調査を用いて、一年間のセラピーの前と後で子どもたちの症状の程度を評価した。

少年性犯罪者:いつまでも危険なのか?

医学博士グレゴリー・K・フリッツ

 まだ大人になりきれていない青年が、―またそれほど多くはないにしろ子どもが―重大な性犯罪をおこすことは十分可能である。例えば1995年度の連邦捜査局(FBI)データによれば、強姦で逮捕された者の約16パーセント、その他の性犯罪で逮捕された者全体の17パーセントが18歳以下であった。性犯罪で有罪となった成人を対象とする研究は、その約半数が少年の頃から性的虐待的行為を始めたと示唆している。

 少年(訳注:満20歳未満)による性犯罪問題が過小評価されているのはほぼ間違いないが、これは性犯罪の犠牲者について知られている、又は報道されている出来事が少年の犯した罪全体に比べあまりに少ないからだ。住民のまわりにいる性犯罪者について地域社会が居住者に警告を発するよう命じた「ミーガン法」(訳注:94年にニュージャージー州で殺されたミーガン・カンカ(当時7歳)にちなんで制定された州法をモデルにした性犯罪者情報公開法(1996年連邦法、48州では州法も制定された)が、米国の全州で少しづつ形をかえて成立して以来、再犯の危険をいかに予知するか、特に少年の扱いをどうするかについての問題が、大きな注目をあびている。残念な事に、この解決法を見つけるのは容易ではない。

 すべての専門家の意見が一致する事実がある。性犯罪をおこす子どもや少年が、みな同じグループに類型付けられるわけではないということだ。彼らの犯す性犯罪行為は、接触のないもの(のぞき魔)から暴力による強姦に及ぶ。子どものときに受けた虐待や性犯罪の経験は、少年犯の間ではよく見られるが、全員がそうだというわけではなく、虐待経験者のほとんどは成人後、性犯罪者にはならない。育った家族が不安定でだらしないことが多いが、これにも特徴的あるいは典型的なパターンがあるというわけではない。ある種の神経心理学的傷害が少年犯罪者の約3分の1に見られるが、知的機能は遅滞から非常に高い者まで様々である。

 「性犯罪者」は法律用語であり、精神病理的に診断される病名ではない。少年性犯罪者の間ではほぼすべての精神障害が合併症として見られるという報告がある。これだけ不均質であると、評価、治療、再犯の予測が複雑になるのは当然である。

 少年性犯罪者の再犯率については、現存データは比較的少なく、明らかに不完全である。10件足らずの縦断的研究があるが、追跡調査した犯罪者数は20人以下から最大で数百人であり、追跡期間は通常5年以下である。現存している研究は不完全ではあるものの、一貫して累犯率を8から14パーセントの範囲内であると報告している。少年性犯罪者の性犯罪以外の再犯率はさらに高く16から54パーセントである。したがって成人データとは対照的にかつ広く信じられているのとは逆に、再び性犯罪をおこしたとして告発される少年性犯罪者の数は比較的少ないのが事実である。

 性犯罪をおこしたとされる集団は多種多様であり、その大多数はプロの犯罪者になることはないが、社会に対する危険度の高い者を特定するのに有効な基準とツールがあれば役にたつだろう。再犯の可能性は、全体としては比較的低いものであるが、被害者に与える影響は重大なものである。しかし現在までのところ、再犯を予測させる特徴で科学的に立証されたものは非常に少ない。考えられる変数には、性的衝動の異常なパターン、暴力、行為の責任を犠牲者に負わせようとする傾向、精神病質(良心や感情移入能力の欠如)などが挙げられる。

 成人の場合に有効とみられたいくつかの評価基準が、思春期の男女にも有効であるか否かを調べた研究はほとんどない。異常な刺激に反応しておこる性的衝動を直接測定すること(ペニスの容積変化測定)などが、成人犯罪者の評価に用いられることが増えている。しかしそれまで少年が経験したことのないような性的なものを見せることは有害ではないかという懸念、そのような方法の人権侵害的な要素、性的にあからさまなものに対する思春期の若者の正常な反応とは何かについてデータがないことなどから、このアプローチの若年犯罪者への適用は制限される。ウソ発見器によるテストが、行動や態度をさらに完全に明らかにすることもあるが、倫理的な問題(インフォームド・コンセント、自己負罪など)と解釈の難しさは、今後の解決を待たれる。

 累犯を予測するもうひとつのアプローチは、治療計画の経験豊かなスタッフに対して、対応している若者について全体的予測をたてるよう依頼することである。その正確度を系統立てて検証したところ、これらの専門家は再犯の危険が少ない者を予測するのはとても上手いが、高いリスクを持つ者を過剰に挙げすぎる傾向が顕著なことが示された。或る研究では、治療スタッフが危険だとした者のうち、実際に性犯罪で再逮捕されたのは5分の1以下であったという。多分「後悔するより、先に用心するほうがいい」というアプロ-チがこの不正確さを生み出したのだろう。

 成人常習犯の危険で治療不可能な犯罪者というイメージを、少年犯罪者に一様に押し付けてはならない。入手可能なデータでこれを支持するものはまずない。いつまでも危険でありつづける若者を見極め、そうでない者に対しては、どのような治療が有効であるかを特定していく集約的研究が求められている。


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, February 2003
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