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Vol. 19, No. 3, March 2003
1. 幼い子どもたちとメンタルヘルス

幼い子どもたちとメンタルヘルス

親への注意

 幼い子どもたちに向精神薬が処方されているという報告について一般の関心が高まっている。現在までの研究では充分と言えず、あらゆる種類の病気について、薬物療法を受けている幼い子どもたちに対するさらなる研究が求められている。メンタルヘルスの分野でも、情緒障害や行動障害をもつ子どもたちにとって最善の治療法とは何かを知るための新しい研究が必要である。
 成長期にある子どもたちは急激な変化と成長を遂げている。精神疾患の診断と治療は、これらの変化を考慮して検討されなければならない。問題のなかには短期的で治療を必要としないものもあるが、長く続き非常に深刻なものに対しては、親は子どものために専門家の助けを求めるべきである。
 ごく最近まで、不安障害、うつ病、双極性障害など脳の障害の多くは、成人してから発症すると考えられていた。現在ではこれらが幼児期の早い段階からも始まることがわかっている。米国の子どもの10人に1人が重篤な精神疾患にかかっており、なんらかの機能傷害をかかえていると推定される。これらの病気の子どもで治療をうけているのは5人中1人未満である。小児期に始まる精神疾患のなかでもっともよく研究され、診断がつけられ、治療が行われているのは注意欠陥・多動障害(ADHD)だと思われるが、この障害についてさえもごく幼い子どもたちについてはさらに研究が必要である。

親と専門家によるQ&A

Q: 幼い子どもの精神状態、行動や感情の問題が気になるときはどうしたらいいでしょうか。
A: お子さんの主治医と相談して下さい。気になる行動や症状について質問をして、できるかぎりの答えをみつけてみて下さい。子どもはだれひとりとして同じではなく、正常な発達でさえ子どもによって違います。知覚処理能力、言語や運動能力は幼児期に発達しますが、両親と心を通わせる、世話をしてくれる人や他の子どもとうまくやっていく能力も同じです。もし保育園や幼稚園に通っているのなら、ご自分の子どもになにか心配な行動の変化が見られるかどうかを保育者や先生に聞いて、これについて主治医と話し合ってみて下さい。

Q: 子どもの問題が深刻なものかどうかはどうしたらわかりますか。
A: 多くの日常的ストレスが行動の変化をもたらします。弟や妹が産まれると、子どもが一時的に赤ん坊がえりをすることがあります。このような行動の変化に気付くことだけでなく、もっと重大な問題の徴候と区別することが大切です。問題が重大で、長く続き、日常の行動に影響を与えるのなら、よく調べなければなりません。食欲や眠りの様子や習慣の変化、引きこもり、何かを怖がっている様子、おねしょなどの赤ん坊がえり、また、悲しそうだったり、涙をすぐ流したりして悩んでいる様子や、頭を打ち付けるなどの自己破壊行動あるいはたびたび怪我をする傾向が見られたら、子どものために助けを求めましょう。それに加えて、過去にあったかもしれない重要な医学的問題、家族の精神障害歴、ストレスをひきおこす身体的、心理的外傷(トラウマ)についてお子さんのこれまでの成育を振り返って考えてみることが大切です。

Q: 子どもを助けるにはだれに相談したらいいでしょうか。
A: まず、お子さんの主治医と相談しましょう。充分な健康診断を受けるのがよいでしょう。心配な行動について説明し、子どもの問題行動の専門家に診てもらうべきか聞いてみます。専門家とは、精神科医、心理学者、ソーシャルワーカー、行動療法専門家などです。教育者の助けも必要としているかも知れません。

Q: 幼い子どもの精神障害の診断はどのようにして行うのですか。
A: 大人と同じように、障害の診断は徴候や症状を観察して行います。経験を積んだ専門家は、これらの症状を子どもの発達レベル、社会的、身体的環境、また両親その他の保育者や先生の報告と関連させて考え、専門家によって定められた基準に照らして評価します。ごく幼い子どもは自分の考えや感情を表現できないことが多いので、診断は難しくなります。また、幼い子どもの精神障害の徴候は、大きな子どもや成人とはまったく違うことがあります。

Q: 子どもは時間がたてばよくなるのではありませんか。
A: 時には良くなりますが、専門家の助けを必要とすることもあります。重篤な問題で、長く続き、日常の活動に影響を与える時は、子どもの主治医に相談する必要があります。精神的、行動的、情緒的障害は子どもの成長に影響を与えることがあるので、十分注意を払わなければなりません。

Q: 子どもに見られる精神障害とはどんなものがありますか。
A: 幼年期に発病の可能性がある精神障害としては、不安障害、注意欠陥及び破壊的行動障害、自閉症その他の広範性発達障害、摂食障害(拒食症など)、気分障害(大うつ病、双極性障害など)、分裂症、チック障害などがあります。状況によっては寝床での失禁なども精神障害の症状であることがあります。

Q: 幼児に向精神薬の服用を勧められる状況がありますか。
A: 向精神薬は、精神症状、問題行動や情緒障害のある幼児で治療の潜在的効果が副作用の危険性よりも大きいとみなされる場合に処方することがあります。問題がとても重大で、長く続くと、治療をしないことが子どもにとって重大な悪影響を及ぼすことがあり、心理的・社会的介入が常に効果的であるとも限りません。ほとんどの向精神薬で幼児における安全性と効果についての研究はされていません。親としては、これらの薬を子どもに投与し続ける危険について医師に質問し評価をしてもらいたいと思うのが当然です。子どもに処方された薬について、副作用の可能性を含めて出来るだけ多くのことを学んでください。心配のない副作用と危険な副作用についてよく知っておいてください。さらに、特定の治療目標(たとえば特定の行動を変容させること)について学び、心に留めておきましょう。複数の向精神薬をごく年少の子どもに投与するのは、絶対に必要な場合を除いて避けるべきです。

Q: 大きな子どもや大人と比べて、薬が幼児に与える影響は違うのですか。
A: そのとおりです。幼児の身体は、投薬に対して年上の人たちとは違ったメカニズムで反応し、投与量による影響に関しても同じことが推測できます。幼児の脳は、急速な発達を遂げており、動物実験では発達段階にある神経伝達物質系は投薬に対して非常に敏感な反応を示すことがわかりました。すべての年齢層の子どもたちに対する薬の効果と有益性を確かめるには、一層の研究が必要です。しかし重篤な精神障害を治療しないでおくこと自体が脳の発達に悪い影響を与えることを知っておくのも重要です。

Q: 学齢前の子が精神障害の診断を受けたとしたら、薬を用いなければならないという意味でしょうか。
A: そうではありません。精神障害のある学齢前の子どもにとって向精神薬が第一の選択肢だということは普通はありません。第一の目標は、この状態の原因となっている要因を理解することです。子ども自身の身体的、情緒的状態が鍵ですが、他にも親から受けるストレスだとか、家庭環境が変わることなど多くの要因が子どもの症状に影響することがあります。ある種の心理社会的治療が薬と同じように効果があることがあります。

Q: 治療計画全体にどのようにして薬物療法を含めるべきでしょうか。
A: 薬物を用いるときは、それだけが唯一の治療法であってはなりません。子どものために他のサービスを捜してみましょう。家族支援サービス、教育的クラス・・・、行動マネージメント療法や、家族療法、その他のアプローチを考えるべきです。薬が処方されたときには、定期的に検査して評価しなければなりません。

出典:NIH-00-4702 Treatment of Children with Mental Disorders (精神障害をもつ子どもの治療)


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, March 2003
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