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Vol. 19, No. 5, May 2003
1. 1歳未満の保育が子どもに悪影響をもたらす可能性
2. 肥満児童の「生活の質」はがん患者のそれと似ている
3. 睡眠障害と攻撃的行動との関連性

1歳未満の保育が子どもに悪影響をもたらす可能性

 新しい研究によると、子どもが1歳未満のときに母親が就業していた3年生、4年生の児童は、そうでない児童に比べて、感情をあらわにすることが多く、ストレスに対する耐性が弱いということがわかった。また、これらの子どもたちは、友だちから「よくたたく子」「意地悪な子」として名指しされる場合も多い。1歳未満のときに母親が働いていた男の子は、そうでない男の子に比べて、教師から見ても、感情をあらわにすることが多いとされるが、女の子は違う。たたくことが多いとの指摘はブルーカラーの家庭の子どもにのみ見られる。論文の著者、Lisa M. Youngblade は、早い段階での母親の就業がもたらすいくつかのマイナス要因が、不安定な育児の原因になっているのではないかと述べている。これらの結果は、両親がそろった3年生と4年生の児童117人を対象にした調査による。この調査では、子どもの性別、母親の人種、社会階層、仕事での地位などが、変動因子として考慮されている。

肥満児童の「生活の質」はがん患者のそれと似ている

 肥満体の若者は、自分たちの「生活の質(QOL)*1」が健康な子どもや青年たちと比べて明らかに損われていると感じている。さらに驚かされることに、米国の研究者たちは、肥満体の子どもや青年らのQOLは化学療法を受けているがん患者と同じようなレベルであると報告している。
 カルフォルニアとテキサスの研究者らは、5歳から18歳の子どもと青年106名(平均肥満指数(BMI*2)=34.7)についてQOLを評価した。その結果を正常な体重の健康な子ども401名とがんの化学療法中の若者106名の結果と比較した。子ども、青年、その親達にはQOLに関するアンケートに個別に答えてもらった。
 その結果、肥満体の子どもと青年たちは全ての領域―身体面、心理社会面、情緒面、社会と学校での機能面―において、健康に関するQOLが、健康な若者と比べて有意に(p<0.001)低いと判明した(各平均総得点67対83)。また、これら肥満体コホート群(*3)の子どもや青年たちは、健康な子どもと比べて健康に関するQOLが損われている可能性が5.5倍高かった。肥満体の若者の健康に関連するQOLは、がんと診断された子どもや若者のQOLと同じように低かった。これらは重大かつ予想外の調査結果であったと研究者らは述べている。これまで化学療法を受けているがん患者は、健康な子どもたちと比べ最低のQOL得点を持つと考えられていたが、親が報告する肥満児のQOLはさらに低いものであった。
 また、ほかに合併している疾患が何もない場合においても、ひどく肥満している若者らは健康関連のQOLの低下を訴えていると結論付けている。肥満の問題を抱える集団について、QOLの低下が起きる危険性があることを医師、親、教師がしっかりと認識していることが非常に重要であると、研究者は注意を呼びかけている。

訳注 1. QOL=Quality Of Life
2. BMI=Body Mass Index
3. cohort=疫学調査において統計因子を共有する集団

睡眠障害と攻撃的行動との関連性

 最新の研究によると、睡眠時呼吸障害(SDB*1)と不穏下肢症候群(*2)は、問題行動のある子どもたちの間でより頻回に起るのではないかという。この調査結果は、睡眠時障害と子どもの問題行動に関連性があるということを重ねて裏付ける結果となった。
 首席研究者のミシガン大、ロナルド・D・チャーヴィン医師と同僚は、二つの一般小児科診療所において、2歳と14歳の子どもと青年872名の1998年2月から2000年5月までのデータを調べた。子どもの親に「小児科睡眠アンケート」(PSQ*3)、「コナーズの親評価テスト」(CPRS-48*4)を受けてもらい、これにより年齢と性別で調整した「問題行動指数」(CPI*5)と「多動性指数」(HI*6)を得た。調査では、いびき、睡眠時呼吸障害(SDB)、不穏下肢症候群と睡眠中の周期的下肢の動き(PLMS*7)に関する質問がなされた。子どものSDBとPLMS得点では、0.33以上で高いと判断され、60以上のCPI得点で、問題行動を示すと考えられた。またHI得点が60以上であれば多動性行動を示すと考えられた。
 研究によると、親の報告した問題行動とSDB、不穏下肢症候群との間に関連がみられた。日中の過度の眠気は睡眠障害の多くに共通して見られるが、これも研究によれば問題行動と関係があるとされた。SDB得点の高い子ども(N=114名)は他の子どもとくらべて、いじめをする、常に喧嘩をする、大人に生意気な態度を取る、破壊的、喧嘩好き、不服従、残酷な態度が3倍まで多く見られた。睡眠障害得点とCPIとの関連では用量反応関係が見られた。つまり一つの変数を段階的に増加させると他の変数も増加した。
 研究者らは、睡眠障害得点と行動との関連が、多動性行動、興奮剤の使用、具体的な症状のない不穏睡眠の訴え、SDBとPLMSの共存症などの因子を調整した後でも統計的に有意な関連性があることを見出した。「因果関係を立証できないものの、睡眠障害の評価によって攻撃的な子どもたちの何人かは新しい治療の機会が得られるかも知れない」と結論付けている。

訳注 1. SDB:Sleep Disordered Breathing
2. restless legs syndrome:不穏下肢症候群=歩行または脚を動かしていないと下肢がむずむずヒリヒリして入眠が妨げられる状態
3. PSQ=Pediatric Sleep Questionnaire
4. CPRS=Connors Parent Rating Scale
5. CPI=Conduct Problem Index
6. HI=Hyperactivity Index
7. PLMS=Periodic leg movements during sleep


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, May 2003
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