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Vol. 19, No. 10, October 2003
1. 暴力にさらされるということ
2. 医療の再統合

暴力にさらされるということ

 子供が成長し、恋愛関係に至るまでの20年間を追った調査研究によると、暴力をふるう両親を目にして育った子供は、大人になると自分自身も恋人や配偶者に暴力をふるう危険性が高まるという。また、子供の時にひどい日常的虐待を受けた経験や、幼少期の行為障害も後の暴力的な関係の要因になるという。研究者によると、この結果には予防策を講ずるための重要なヒントが隠されているという。例えば、子供が思春期を迎える前に、事例対象になりうる家族を見つけるといったようなことである。そのような対策には、女の子も対象にすべきだとされている。なぜなら家庭内暴力の予測因子に男女の格差は見られなかったからである。研究者はまた、子供の破壊的行動障害の予防と治療は恋人や配偶者への暴力を防ぐ重要な要素にもなりうると考えている。この研究結果は、無作為に選ばれた543人の被験者達から得たものであり、調査は1975年から始まった。20年後の1999年に、被験者達へアンケートを送り、最近の生活変化、職歴、攻撃的な行動、恋愛遍歴、恋人や配偶者への暴力などについてたずねた。このアンケートの回答率は71%だった。
[Journal of Consulting and Clinical Psychology2003; 71(4): 741-753.]

医療の再統合

行政学修士・公認臨床工学技士 ドナルド・P・ガラマガ

 今日の社会には「相関性」を持った情報が豊富にあり、その中で生きていることの大きな利点は、異なる研究分野の相互関係が理解しやすいことである。それが一番はっきりと分かるのは、主に医療、社会科学、教育の分野における、心とからだについての見解である。

 実際、今日では、小児科やかかりつけの医師の診察を受けるとき、その病気や怪我は必ずと言っていい程身体的、精神的、両方の側面をもっていると言っても過言ではないだろう。例えば、胃の痛みと不快感を訴える子供の症状は、慢性的あるいは一時的な不安が原因とは考えられないだろうか?肥満が進行している青少年の場合はどうだろうか?このような社会や個人にとって極めて大切な健康上の問題に取り組む時、どのような生活上の改善が必要なのだろうか?

 一方、なぜ身体面と精神面の健康が今でも別々に考えられているのだろう?なぜ、公的機関や民間の保険業者は、統合的な医療による治療を支持しようとせず、一連の確たる医療実態と向き合うことを避けているのか?なぜ医科大学やその他の医療科学系大学では、健康を保つための心がけや患者の心理的変化を二の次にして、身体的、慢性的な問題を先に治療することに重点を置いているのだろうか?これら全ての疑問に対する答えは「現在のシステムがうまく機能していない」ということに始まり、「このシステムのほとんどの部分を改める必要がある」ということに尽きる。そして、そのどの箇所においても、必要とされる改善を実現するのは、相当の労力を要すると思われる。

 小児科や医療科学の分野で現在わかっていることは、子供達を家族や社会で生きる一人の人間としてではなく、部分単位で治療してきた今までの考え方はばかげている、ということだ。また、医者や医療関係者が一丸となって診療をし、子供達(や他の患者達)を総合的に診断すれば、経費がかさむ治療室(救急治療室など)の利用や訪問看護の回数を徐々に減らすことで、治療費は減少し始めるはずである。

 では、何をためらっているのか?一つには、変革は一夜にしてならず、である。そのためにはまず、変革が必要であるという一般的な賛同を得なければならない。共に公衆衛生局長である サッチャー博士 (Dr. Satcher) や カーモナ博士 (Dr. Carmona) も、正にそれが出発点だと明言している。そして、本来の治療や健康を保つための指導を一人一人に施すためには、治療方針への同意や患者の個人情報を守る方法についても考えなければならない。これは単純な仕事ではない。最良の医療制度を確立するためには、常に改革を重ねていかなければならないだろう。

 保険業者に関しては、患者の情報を共有し、患者の治療のためにどのような要素が必要なのかを調べることに費やしてきた時間や仕事を統合医療に引き渡さなければならない。州や政府においては、特別な場合を除いて、分断された医療がこれ以上続かないように、どのような法律や規則を改正すべきかを検討する必要があるだろう。そして、医科大学やその他の医療分野の大学では、ヘルスケアが概念化されて教えられるように、必要ならば構成を変えることも含めてカリキュラムの見直しをしていかなければならない。この動きは全国的に広まりつつある。

 こうした新しい統合的な医療制度は“仲介的”な要素を持つものでなければならない。つまり、効果的な回復と共に、患者が再び家庭や健全な交友関係に戻り、学校生活や地域社会で積極的に活動できるよう、促すものでなくてはならない。

 これからの医療および健康の在り方は明らかである。分断した医療に非効率的であり、問題を固定化し、必要な処置をするのを妨げ、医療費を増額させる。現在の分断された医療を改革することはできるのだろうか?再統合することはできるのだろうか?いや、しなければならないのである。

ドナルド P. ガラマガ (Donald P. Galamaga) は、ロードアイランド州にある、ブラッドリー病院の医局員であり、元ロードアイランド州精神衛生局長である。


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, October 2003
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