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Vol. 22, No. 10, October 2006
1.自閉症が及ぼす広範囲な影響
2.LEGO© (レゴ)遊びで自閉症児の社会的交流スキルを伸ばす

自閉症が及ぼす広範囲な影響

新しい研究結果によると、自閉症は、これまで推測されていたように社会的交流スキルやコミュニケーション力、推論能力に不具合を生じさせるだけでなく、脳全体に及ぶ広範囲な機能に影響を与えるという。研究者は、自閉症が、記憶や動作、知覚などに関わる広範囲な能力やスキルに影響を与えている可能性を確認した。この新しい研究結果は、脳の様々な部分が連携して複雑な作業を成し遂げる機能が自閉症によって妨げられることを示唆している。

この研究は、国立小児保健発育研究所(NICHD)から助成を受けた研究ネットワークである自閉症の共同研究プログラム/CPEA(Collaborative Program of Excellence in Autism)、及び国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)の研究員によって行われた。

NICHDによるプレスリリース(2006年8月16日に)で、研究のリーダーであるナンシー・J・ミンシュウ(Nancy J. Minshew)医学博士は、以下のように述べている。「これまでずっと、研究者は自閉症について、社会的交流、言語的・非言語的コミュニケーションにおける困難、繰り返し行動もしくは特定のものへの過剰な興味、という三つの行動特性に焦点を当てた研究をしてきた。しかし、ここ20年の間で、動作、平衡感覚、視覚認知能力、記憶などに関わる脳の他の部分に対して自閉症がどのように影響するのかが解り始めてきた。」

最近の研究で、ミンシュウ博士と彼女の研究チームは、総合的な一連の神経心理学テストを行い、56人の高機能自閉症の子ども達(年齢層は8歳から15歳まで、IQ=80)と、年齢とIQが合致する対照群(コントロール群)とを比較し、自閉症の子ども達に何か特有の精神機能パターンが見られるかどうかを調べた。

自閉症の子ども達は、テスト全体を通して対照群の子ども達と同じような成果を上げ、問題によっては対照群の子ども達よりも良い成果を上げた。視覚・空間能力に関するテストでは、『ウォーリーを探せ』の絵本の中のウォーリーを見つけるなど、雑然とした視界の中の小さい物体を見つける作業が非常に得意だった。しかし、似ている人の顔を区別するなどの複雑な作業が苦手だった。また、自閉症の子ども達は、話の詳細を覚えられる優れた記憶力を持っているように見えるが、話の内容を理解するのは苦手だった。同様に、スペリング(綴り)と文法の習熟度は高いが、比喩や熟語などの複雑な言葉のあや(ニュアンス)は理解することができなかった。

その他、文字を書く、はさみを使う、靴ひもを結ぶ、などの作業も、自閉症の子ども達にとっては難しかった。

知覚という認知領域においては、尖っていない物体と尖った物体の違いを、両方のグループの子どもが同様によく区別することができた。しかし、指先でなぞって数字を当てるテストでは、自閉症の子どもは対照群の子どもより間違いが二倍あった。

「私たちの研究論文は、自閉症の主な障害は、社会的交流の障害ではなく、脳が受け取る情報、とりわけ複雑な情報の処理に影響を与える、広範囲に及ぶ障害であることを強く示唆するものである。」とミンシュウ博士は言う。

今回の研究の共同研究者であるダイアン・L・ウィリアムス(Diane L. Williams)博士によると、臨床医が、「自閉症が単なる社会的障害ではないこと、そして、自閉症の子ども達に社会的ルールを教えるだけでは、問題の一部しか解決できないということを認識することが重要である。」また「自閉症の子ども達は、自分達だけでは情報をよく理解できない」ので、介護者が自閉症の子ども達の世界に介在して情報を前処理し、要点をよく理解できるようにかみ砕いて伝える必要があると述べている。

Williams DL, Goldstein G, Minshew NJ: Neuropsychologic functioning in children with autism: further evidence for disordered complex information-processing. Child Neuropsychology 2006; 12(4/5):279-298. [CABL summary compiled from various news sources.]

LEGO© (レゴ)遊びで自閉症児の社会的交流スキルを伸ばす

レゴを使ったグループでの遊びが、自閉症児の社会的スキルの発達を促すのに効果的な介入方法となるかもしれない。『自閉症』(Autism)8月号で報告されている3年間にわたる遡及的研究によると、組み立てて好きなものをつくるレゴを媒体とすることで、社会的交流・コミュニケーションに障害のある子どもたちが、より上手に交流し合えることがわかった。研究は、レゴセラピーを受けた60人の自閉症児のグループと、レゴセラピー以外のセラピーを受け、その他の条件を同じくする対照群とで比較された。レゴセラピー群の子ども達はレゴを用いた個人及び集団療法に参加した。その間、言語・非言語コミュニケーションに重点をおきながら、一人で、またグループで協力してレゴを組み立てるスキル、協力して問題を解決していくこと、分け合って一緒に使うこと、順番に交代することなど、幅広いスキルを学んだ。対照群の子供たちもまた、従来からある心の健康のための介入方法にそった個人療法・集団療法に参加した。どちらのグループも著しい変化が起こったが、レゴセラピーの参加者のほうが、ヴァインランド適応行動尺度の社会性領域(Vineland Adaptive Behavior Scale socialization domain)とジリアム自閉症評価尺度の社会的相互作用下位尺度(Gilliam Autism Rating Scale social interaction subscale)において、対照群よりも著しく進歩した。この研究結果は、自閉症スペクトラム障害の子どもの社会的交流スキルの介入方法について今後のあり方を問いかけるものだ。従来のものとは対照的に、なぜこのようにレゴが自閉症児の効果的な介入になるのかを解明するためにさらなる研究が必要とされる。
[LeGoffDB, Sherman M: Autism 2006; 10 (4): 317-329]


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, October 2006
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