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Vol. 22, No. 11, November 2006
1.良い子供時代を送るために必要なもの: イギリスで実施された調査から

良い子供時代を送るために必要なもの: イギリスで実施された調査から

子供や十代の若者が考える良い生活とは、良い生活を送るために必要な条件とは?その答えを見つけるため、イギリスで調査が実施され、イングランド地方在住の数千人の若者を対象に調査が行われた。

この調査は、イギリスの子ども達の間で多く見られるようになった精神衛生上、心の問題が、現代社会のストレスに起因しているのではないかという懸念を受けて着手された。デイリー・テレグラフ紙(Daily Telegraph)に掲載された記事では、教員と精神科医のグループが、コンピュータ、宣伝広告、「テストの成績を重視しすぎる」小学校などが、子ども達の問題行動や鬱の増加の要因なのではないかと述べている。

「イギリスでは、子ども時代というものについて、社会全体が何か大切なところで勘違いをしてきたのではないかというムードが確かに漂っている。」ヨーク大学と共同調査を行った児童協会(Children’s Society)の最高責任者、Bob Reitemeier氏は言う。

調査の参加者の回答から浮き彫りになったテーマとしては、人間関係 - 特に家族関係の質、学校の試験や学校の勉強についての悩み、家・学校・地域社会における自分の身の安全、そして、考え方・言論・行動の自由、などが挙げられた。

一方、回答のなかで全く言及されなかったため、逆にその意外性が目立ったテーマもあった。例えば、科学技術である。若者は、科学技術をあたりまえのものと捉えている、あるいは根本的なレベルでは、彼らの日常生活の質に何の影響も与えていないという現実が反映されているのかもしれない。その他、回答者がほとんど言及しなかったテーマは、国または世界の政治の在り方について、精神的次元に関する問題についてだった。

調査は2005年に実施され、イングランド地方の16の地域から選ばれた14歳から16歳の11,000人の若者が参加した。調査アンケートの最終ページには、「若者が良い生活を送るために最も必要なものは何だと思いますか?」「若者が良い生活を送ることを妨げるものは何だと思いますか?」という二つの自由回答式の質問を載せた。

研究チームは、50%無作為抽出法による調査データの詳細な質的主題分析、および、参加者が回答に用いた単語の使用頻度についての内容分析を行った。以下に、参加者の回答の概要をまとめる。

「家族」は、最も多くの回答者が挙げたテーマで、一番重要なものと考えられている。回答者の約93%は、両親や養育者が自分のことを気にかけてくれると感じており、それよりも少ない数字になるが、63%が両親や養育者は自分のことを理解していると思っている。「友人」を持つことは、次に重要と考えられているテーマで「友達だから応援する」といった肯定的な意味で用いられていた。

「余暇」は、「クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)」に欠かせないものとして三番目に重要とされている要素だが、回答によって様々な文脈で言及されていた(例:何かやることがある、何もすることがない、リラックスできること、スポーツに関わること、セックスをする、部活に参加する、趣味を持つ、音楽を聴く、映画を見に行く、買い物、人との付き合い、退屈する、など)。回答者の約60%が「私は、特に何をするでもなく友達とつるんでいることが多い。」という項目に同意している。また、出かけられる危険のない場所があるという意味で「安全性」も若者にとって重要な要素だと考えられている。

質の高い「教育」を受けることも、良い子供時代を送るための大きな要因の一つであると考えられている。ほとんどの場合、「教育」は肯定的な意味で用いられていたが、「学校」は、試験や多すぎる宿題によるストレスというマイナスの影響があるために、時に、良い生活を送ることへの妨げになると考えられている。

多くの回答者が、子供時代の経験は自分自身の「行動」に因るところが大きいと考えている。特に、若者が良い生活を送ることができない要因として、薬物使用や飲酒などの「物質使用」を挙げた回答者が多かった。しかし、おいしく煙草を吸うなどの物質使用は、良い生活を送るために欠かせないと答えた者も少数ながらいた。その他、良い生活の障害となる行動として、犯罪に関わることを挙げた回答もあった。

分析によって浮き彫りになったサブテーマとしては、「愛」(特に、家族生活における愛情の大切さ)、「支援」(最も顕著なものとして、家族、友人、学校、などからの支援)、「公正さ」(人間関係において他人から公正に扱われること、あるいは、偏見、差別、いじめなどの否定的な側面からの言及)、「敬意」(公正さと深く関連しての言及、互いに尊敬し合うことの大切さ)、そして、「安全・保障・保護」(ここで挙がった二つの主なテーマは、犯罪への恐怖と薬物の影響だった。また、安全を脅かす恐れのあるギャングや大人も言及されている。)が挙げられている。

この調査の範囲を広げるために、児童協会は、国の調査委員会に呼びかけて、今日のイギリスにおいて良い子供時代を送るためには何が必要だと思うかについて、子供、青少年、若者に関わっている専門家、および一般国民からの意見、実態を示す情報を求めている。

※この調査につきましては、下記のURLでも詳しく説明されています(英語)。
www.goodchildhood.org.uk


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, November 2006
Reproduced with permission of John Wiley & Sons, Inc.
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