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教職課程以外でのサポートも必要である教育実習には,大学の教職課程の授業で理解するだけでは及ばないこと,具体的には学校現場で子どもを目の当たりにしたときに経験する不安や感動など,様々な感情が交錯した葛藤を経験できるという点で価値があるということになります。そこで自らの教職への適性を探り,進路選択を決定していくことになるのでしょう。しかし,「不安や戸惑い」などを経験したからといって,「自分には教職への適性がない」という結論を出すのは早すぎます。教職に限らず,仕事をしていく上では必ず葛藤を伴うのは言うまでもありません。現役の先生からは,以下のような意見もありました。 教職人生は自己の教育理念と現実の中で葛藤しながら,満足することなく歩み続けるものです。厳しい道ですが,人様の大切な子どもを導く仕事ですので,その厳しさは当然のものですね。(小学校・男性) 教育実習ではその厳しさの,あくまでも一端を体験できる機会ということになります。しかし,「教職の一端」を経験するだけで,教職への適性を探ることにも限界があるのは事実でしょう。それは反面で,教育実習のみならず,教員養成のシステム自体に限界がある可能性を示唆しているともいえます。これも現役の先生から,以下のような意見が出ました。 大学での教員養成について(その教育体制,教育内容,教授の資質,カリキュラムなどについて),現場での教員はたくさんの意見や要望をもっているように思われる。(中学校・男性) 近年,大学の教員養成の制度自体を「見直す」動きもがあります。実際にそのような動きとは別に,上記のような現場からの意見があるのも事実なのかもしれません。しかしいずれにせよ,特に教職を志望するものにとって教育実習が大切なものであることは,これまでの論で明らかになりました。大学生自らの教職への適性を判断するための教育実習ではなく,それ以外にも事前に問題意識をもって実習に臨めるような機会を設けることで,「よりよい教師」を輩出していけるように教職志望の大学生たちをサポートしていく必要性があるのかもしれません。 |