トップページ サイトマップ お問い合わせ
研究室 図書館 会議室 イベント情報 リンク集 運営事務局

 トップ 図書館 CRNイベント 対談トップ


―対談―
人類学と子ども 脳の巨大化とともに長期化した子ども期

小林 登×馬場悠男

3  複数の人類が同時期に地球の上に存在した

小林 人類はアフリカで発生して、地球全土に広がっていきますね。私は、その理由は人間としての好奇心の強さにあるのではないかと思います。赤ちゃんは生まれると、大きな産声を上げて泣きますが、それがおさまると、周りの様子を眺め回します。人間というのは生まれながらにして、インフォメーション・シーカー(情報の探索者)なのではないでしょうか。気候の変動によって広がったというよりも、例えば、太陽の昇る方角には何があるのだろう、山の向こうにはもっとうまいものがありそうだ、といった好奇心により広がっていったとは考えられませんか。

馬場 太陽が強い影響を与えたことは予想されますが、特定の方角に移動した形跡がないので、人類学者としては肯定も否定もしがたいですね。まず、二足歩行によって移動が楽になったことは言えるでしょうね。それから、人間は汗をかきますけど、これが冷却装置となって長い距離を移動するときには有利に働きます。また、人間は裸でも、皮下脂肪をためこむことで、けっこう寒さをしのぎます。つまり、人類は他の動物に比べ、体温コントロールが巧みで、そのような環境への適応力が、人間の行動範囲を広げていく要因となったのではないでしょうか。
 ただ、うまいものを探していたということでは、ホモ・サピエンスが魚を捕る技術を開発して、海産物を求めて海岸沿いに移動したということはあるようです。そのような遺跡がアフリカでも見つかっています。

小林 日本人はそういうホモ・サピエンスの子孫なのでしょうかね(笑)。私たちが考える以上に、昔のヒトはあっちこっちに動き回っていたんですね。

馬場 10年ほど前までは、アフリカで進化した原人が世界に広がって、各地域でホモ・サピエンスに進化したと考えられていたのですが、今はそのような説は絶滅しかかっています。アフリカで、猿人だけでなく、原人も旧人も新人も誕生して、それぞれ世界に広がっていったということですね。何万年もかけて広がりますから、周縁の地にたどり着いた頃には、アフリカではすでに新たな人類が生まれていて、古いものは淘汰されているということも起きたようです。

小林 同じ地球上に、複数の人類が同時期に存在することがあるのは、そのためですね。

馬場 特殊な例としては、昨年末に科学雑誌「ネーチャー」に論文が載りましたが、インドネシアのフローレス島で1万2千年前までジャワ原人の子孫が残っていたというのです。1万2千年前というと、すでにホモ・サピエンスが世界中に広がっている時期で、原人や旧人はとっくに滅んでいました。どうやら数十万年前にジャワ原人が何らかの手段で海を渡って、孤立した島で特殊化して、身長わずか1メートル、脳容量も380tぐらいに小さくなって、そのまま生き残ったようです。動物ではときどきそのようなことが起きますが、ヒトの場合も、たまたま周囲から隔離されていますと、古いタイプの人類が生き残るということもあるようなのです。


前へ 次へ


ページトップへ

Copyright (c) 1996-, Child Research Net, All rights reserved.
このホームページに掲載のイラスト・写真・音声・文章・その他の
コンテンツの無断転載を禁じます。

利用規約 プライバシーポリシー お問い合わせ
ベネッセコーポレーション チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)は、
ベネッセ教育総合研究所の支援のもと運営されています。