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スウェーデンの女性思想家Ellen Key(1849-1926)は、1900年に「児童の世紀」"Barnets dr hundrade"を刊行し、20世紀は「児童の世紀」(子供の世紀)にしなければならないと論じた。すでに50歳に達した彼女は、1870年代ヨーロッパ各国で起こった、教育制度を整理・拡大・充実し義務教育化する動きを見て、20世紀こそ、子どもが幸せに育つ平和な社会を築かなければならないと考えたものと思われる。 しかし、今20世紀を終わりつつある現在、わが国の子どもたち、さらには先進国の子どもたちにとって、今世紀は良い世紀だったといえるだろうか。もちろん発展途上国では、事態はさらに深刻である。筆者は、子どもたちの問題ばかりでなく、今世紀末の湧き出た社会の諸問題を考え合わせると、子どもを対象とする学問体系の専門家がパラダイムを転換して、一堂に会して話し合う必要があると考える。そのような、学問的な話し合いの場を形成する理念的な柱として「子ども学」を提唱してきた。 本文では、なぜそれが求められるかを論じたい。 1.人間の歴史の中での「今」を考える。 2.20世紀末の兆候 3.パラダイムの転換を求めて 4.「子ども学」―子どもに関係する学問にもパラダイムの転換が必要 |