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Vol. 20, No. 1, January 2004
1. 低出生体重児における発達の問題
2. 遺伝:アルコール性障害における家族の影響

低出生体重児における発達の問題

 重度の低出生体重児(Extremely Low Birth Weight- ELBW)が学齢に達したときの状態を調べた国際共同研究の結果によると、低出生体重による後遺症で、学校生活において様々な困難に直面していることがわかった。研究では、地域住民をベースにした4つのコホート群で、出生時体重が500グラムから1,000グラムだったELBW生存児の調査をおこなった。ニュージャージー州(米国)、オンタリオ州中西部(カナダ)、ババリア州(ドイツ)、オランダのELBW児の出生時から児童期中期(8歳から11歳)までを縦断研究し、種々の精神測定テストで評価した。特別な教育支援や留年について情報は親の報告から得た。研究の全般フォローアップ率は84%だった(N=436)。研究者らは4つのコホート群すべてに顕著な類似性を見出しており、ELBW児の半数以上が深刻な教育上の問題を経験していた(例:特別教育支援および/あるいは留年)。精神測定中心値を計算したところ、正常範囲内(国内平均による85パーセンタイル)にあるELBW児の割合は次のとおりであった。IQ:44から62パーセント、読解力:46から81パーセント、算数:31から76パーセント、スペリング:39から65パーセント。研究者らの報告によれば、ニュージャージー州の子どもたちの認知能力・学習の達成度が最も高く、ババリア州の子どもが同年齢の子どもや、他の3つのコホート群と比べてすべての学力で劣っていた。さらに、研究者らは別個におこなった分析で、4つのコホート群すべての学齢期児童が行動面でも同様の問題を抱えていることを明らかにした。
 「この一般集団ベースの大規模国際研究により、ELBW児らは学齢期以後も障害による相当の重荷や学校での困難な思いを経験しており、特別教育支援サービス利用の増加にもつながっていることが明らかになった」と著者らは述べている。「学校での困難が、四カ国全部でELBWの重篤な後遺症としてあった。これは社会的、経済的な意味を持つものである」。

Saigal S, den Ouden L, Wolke D他:Development problems in low birth weight children, Pediatrics 2003;112:943-950.

遺伝:アルコール性障害における家族の影響

 Archives of General Psychiatry誌12月号に発表された研究によると、家族環境の影響はアルコール中毒の遺伝的リスクが高い子どもにとって、アルコール濫用障害になるか否かの重要な因子となりうる。研究者らは、アルコール依存症の発症リスクに遺伝と環境がどのような影響を与えるかを、双生児の子どもたちを使って調べた。Vietnam Era Twin Registry(ベトナム時代双生児登録)に登録された一卵性と二卵性の男性双生児1,213人に電話インタビューを行った。この登録は、1939年1月から1957年12月までに生まれた男子だけの双生児で1965年5月から1975年8月までの間に米軍に勤務した人たちからなる。研究は、1992年にインタビュー調査に参加し、1974年から1988年の間に子どもが生まれたと報告した登録メンバーを含んでいる。研究者らはさらに、これらの双生児の子ども1,270人と、その母親862人にもインタビューを行った。インタビューではアルコール濫用とアルコール依存症を含む精神障害について詳細な情報を得た。子どもの年齢は12歳から26歳だった。インタビューを受けた子どものうち276人の父親が一卵性または二卵性双生児で、アルコール濫用やアルコール依存症はなかった。残りの子どもでは、父親か父親の双子の兄弟、または両者にアルコール濫用ないしはアルコール依存症の病歴があった。研究者らは、アルコール依存症の病歴がある一卵性または二卵性双生児の親から生まれた子どもは、アルコール中毒でない父親の子どもとくらべてアルコール濫用や依存にいたる可能性が有意に高いことを見出した。さらにアルコール濫用のある一卵性双生児で、もう一方の兄弟にもアルコール依存症がある場合、その子どもたちはアルコール中毒のない双生児の子どもたちよりもアルコール依存の可能性が高いことを見いだした。研究によれば、本人にはアルコール濫用や依存はないが一卵性双生児のもう一方の兄弟がアルコール依存症である場合には、その子どもたちは双子のどちらともアルコール濫用や依存症のない双生児の子どもとくらべても、アルコール濫用や依存になる可能性の割合は変らない。「これらの調査結果は家族環境の影響が、子どもたちにあらわれる結果に違いを生じるという仮説を裏付けている。とくに低リスク環境(例:親にアルコール依存症がないこと)は、子どもにおいてアルコール依存障害をおこす高い遺伝的リスクの影響を和らげることがある。」と結論付けている。

Jacob T, Waterman B, Heath A 他:Genetics family influence alcoholic disorders, Arch Gen Psychiatry 2003;60:1265-1272


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, January 2004
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