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Vol. 20, No. 12, December 2004
1. 心理テストを役立てる

心理テストを役立てる

グレッチェン・フェロプロスPh.D
エレン・ブラーテンPh.D

 4歳から18歳までの子どもたちが平日の大部分の時間を学校で過ごすことを考えると、子どもを専門にしている臨床医はこうした環境で子どもがどのように活動しているかについて知ることが欠かせないだろう。最近の統計によると、約5人に1人の生徒に、介入を必要とする何らかの学習上の問題があるという。これらの問題は往々にして、子どもが学校で失敗を経験し、自尊心を傷つけられ、その他多数の問題を引き起こすまでは、真剣に取り上げられることがない。
 幸いにも家族は、子どもがどの様に学習しているか、対処すべき認知・情緒・行動に関する問題がないかを確かめることができる頼もしいサービスが利用できる。しかしこの役に立つサービス、心理テストについて、学校も医療制度も殆ど何も情報を提供していないのが現実である。
 心理テストとは、知力、学力、神経心理学、情緒の側面から広範囲にわたった評価をし、子ども関する重要な情報を引き出すテストを意味する。
 子どもに心理テストを提供する者として、子どもにテストを受けさせ、評価してもらうように勧める立場に立つことがよくある。しかしこれが本当に適切なのはどんな時なのだろう。どのように紹介したらいいのか? 情報は治療にどう役立つのか。
 私のようなプロバイダーや、親、教師、あるいは子ども自身が発達、学業成績、注意力や記憶などのスキル、あるいは基本的行動などについて何かが「どうも変だ」と感じるときに、テストをすすめるのが適切である。たとえば、子どもの社交性が標準からずれているというだけ、あるいは不安そうに見えるというだけで、紹介を受けたことがある。情緒的働きのテストを含む神経心理学の全面的評価の結果、これらの子どもたちの中には、学校の成績ではまだ明らかになっていないものの、社会的スキルや注意力、行動に影響を与える非言語的学習障害がある子どもがいることが明らかになった。
 診断を確定するためテストを受けるように紹介されることもある。この子どもにうつがあるか、思考障害があるか、ADHDなのかあるいは単にひどい心配性なのかといった診断である。紹介で問題とされるのは例えば「どうやってその子は情報を認識しているか」などという一般的なこともあるが、もっと具体的に「この子どもに心理療法が役に立つだろうか、あるいは別のアプローチを試みるべきだろうか」などということもある。

心理テストはどこで受けるか

 紹介の決定がなされると、次は病院や診療所を通じて個人的に子どもの評価をしてもらうのか、あるいは公立学校の制度を通じて受けるのかを決めなければならない。子どもが私立学校に通っていても、住んでいる地域の公立学校を通じて評価を受けることができる。考慮すべき要素はいくつがあるが、もっとも重要なのは良い心理学者を見つけて評価を受けることである。公立学校によく訓練を受け、的確な総合的評価をくだせる評価者がいる場合もある。
 しかし子どもに注意欠陥多動障害(ADHD)、外傷後ストレス障害(PTSD)、失読症、アスペルガー症候群があるかを調べるために紹介される場合は、学校の評価者のすべてがこうした診断が出来るとは限らない。また個人的に評価を依頼する場合の落とし穴は、テストによる評価費用が健康保険でカバーされない時があるのと、かなり高い費用(通常1500ドル〜2000ドル位)がかかるということである。
 心理テストのプロバイダーが公的制度を利用しない評価の紹介をする場合は、問題点を出来るだけ治療のあり方に持っていき、「学習上の問題」だとか「学校生活での困難」などという言葉は使わないのが賢明である。保険会社の殆どは、学習上の問題は学校が扱うべき問題と見て、支払を拒否する。診断の確定や、薬の使用/選択など治療上の決定を適切に行うため、あるいは他のやり方が求められているのかを判断するために心理テストが必要であると指摘することが非常に大切である。

結果は役に立つだろうか

 評価結果を利用できるということになれば、プロバイダーは担当の子どもの患者を支援する立場に立つことになる。学校のテストでは、子どもは学校では特別な支援を受ける必要がないと判断されているとしても、子どもが苦しんでいるのは確かである。親に個人的にテスト・評価を受ける権利を主張するようすすめるのは役に立つかもしれないが、殆どの人たちはこの選択肢について知らされていない。個人的に受けるテストによる評価とは「セカンド・オピニオン」のようなもので、学校がその資格が適切だと認めた免許を持つ心理学者による評価をいう。
 このフォローアップ評価は、学校が費用を負担する。学校はその評価結果を考慮に入れなければならないが、学校には評価をした心理学者の勧めること全てを実施しなければならない法的義務はない。質の高い評価の結果から得られるものは、診断(ADHD、非言語的学習障害など)、神経心理学的指標などを用いたさらに徹底的なテスト、学校の財政状態を考慮せずに費用がかかるとしても最善と思われる提案などである。

支援が必要である

 子どもの患者を支援する立場にあるプロバイダーの必要性は、家族に何を提案するかといったことだけにとどまらない。手紙を書いたり、教師に連絡したり、学校で会合に出席することなどは、子どもが適正なサービス・プラン(IEP)を受けられるようにするために必要な活動であろう。
 親のために外部のサービスや財源を見つけるのも子どものケアに対する大切な貢献であり、子どもの人生に意味ある違いをもたらす。たとえば子どもにアスペルガー症候群があり、社会的スキル学習のサマープログラムが必要だとしたら、テストプロバイダーが地域でそうしたサービスの提供があるかどうかを知っていることが非常に大切である。プロバイダーが様々な障害をもつ子どもたちをみる機会が多い場合には、パンフレットやインターネットなどから得られ支援に関する情報に精通して家族を助けていく必要がある。
 上述したように、テストは広範囲の利用価値があるが、第一の目的は子どもの勉強や、社会の中でよりよく過ごせるように助けることである。子どもの専門家である我々は、テストについて情報を家族に提供し、必要なときには紹介をし、すすめられた支援を獲得しながら家族を導いていく大切な役割を担っている。


The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, December 2004
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